子どもと一緒に電子工作を行うとき、Arduino やRaspberry Pi、各種センサーモジュールなど身近な部品で様々なものが作れるのが楽しいですよね!
カメラや録音マイク、無線通信関連の物…様々なモジュールが有るので
これは邪まな考えを持ったら危ない事にも使えてしまう気がする。
今回は、作る前に知っておきたい「意外と法律に触れる可能性のあるもの」の存在を明らかにしましょう。
親子で電子工作を楽しむ際に「これは大丈夫?」と疑問に思いがちな事例を、法律的な観点から整理してみました。


法律解説 電子工作で気をつけたいこと

特に気をつけたい法律を説明します。
1. 電波法(でんぱほう)
電波法は、無線で電波を送ったり受けたりする機械を安全に使うためのルールです。
例えば、スマホやWi-Fi、Bluetoothは決まったルールを守って電波を出しています。もしルールを守らずに勝手に強い電波を出す機械を作ると、他の大切な通信に迷惑がかかり、罰金や罰則が科せられることがあります。
だから、電子工作で無線の機械を作るときは、必ず「技適マーク」があるモジュールを使うことが大切です。
2. 盗聴・盗撮に関する法律
人の会話や映像を無断で録ったり聞いたりするのは、プライバシーの侵害になり、法律で禁止されています。
小さなマイクやカメラのモジュールは便利ですが、誰かに無断で使うと違法です。みんなが安心して暮らせるように、勝手に音や映像を盗み取る装置は作らないようにしましょう。
3. 不正アクセス禁止法(ふせいアクセスきんしほう)
他人のコンピューターやネットワークに勝手に入ることは禁止されています。たとえ工作のつもりでも、パスワードを勝手に調べたり、他人のデータに触れる装置を作るのは法律違反です。
4. 火薬類取締法(かやくるいとりしまりほう)
電子工作で爆発物の起爆装置などを作ることはとても危険で、法律で厳しく禁止されています。絶対に真似をしないでください。
電子モジュールで気を付けなければならない物
では、現在販売している電子モジュールで
どんな物がどんな時に、法に触れる可能性が有るか見てみましょう。
1.無線通信関連の工作物
WiFiやBluetoothモジュールを使った作品
最も注意が必要なのが無線通信を使う工作です。
問題となる可能性のあるモジュール
- WiFiモジュール:ESP32-DevKitC、ESP8266 NodeMCU、Wio Terminal
- Bluetoothモジュール:HC-05、HC-06、ESP32(Bluetooth機能)
- 2.4GHz無線:nRF24L01+、XBee S2C、RFM69HCW
- LoRaモジュール:RFM95W、SX1276、E32シリーズ
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これらは 電波法 の規制対象となります。技適マーク(技術基準適合証明)のないモジュールを使用したり、認証済みモジュールでも改造を加えると違法になる可能性があります。
電波法は、無線通信の混信や妨害を防ぎ、また、有効希少な資源である電波の効率的な利用を確保する目的のため制定されている法律です。
その為、電波を利用するときには総務大臣からの免許を受けなければなりません。
技適マークがついている製品なら、無線局の免許を受けなくても使用することができます。
これは技術基準への適合が事前に証明されているからです。
安全な楽しみ方
- 技適マーク付きのモジュールを選ぶ
- モジュール自体は改造しない
- 子どもには「見えない電波にもルールがある」ことを説明する良い機会に
特定小電力無線を使った作品
注意が必要な製品例:
- 920MHz帯モジュール:TWELITE DIP、IM920sL、ES920LR
- 429MHz帯:STD-T61、TWE-001A
下の画像は商品リンクです👇

トランシーバー的な機能を持つものも要注意です。免許不要の特定小電力無線の範囲内でも、技適認証が必要です。
2. カメラ・録音機能付きの工作物
防犯カメラ風の作品
よく使われるカメラモジュール:
- Raspberry Pi用:Pi Camera Module V2、Pi HQ Camera、Pi Camera Module 3
- Arduino用:OV2640、ESP32-CAM、ArduCAM Mini
下の画像は商品リンクです👇


Raspberry Piにカメラモジュールを付けた監視システムは人気の工作ですが、設置場所によっては問題となる可能性があります。
問題となる可能性:
- 他人のプライバシーを侵害する撮影
- 公共の場所での無断撮影・録音
- 近隣住宅が映り込む場所への設置
安全な楽しみ方:
- 自宅の敷地内のみで使用
- 家族の同意を得て使用
- 「プライバシー」について子どもと話し合う機会に
録音機能付きの作品
音声認識機能を使った作品も同様で、他人の会話を無断で録音すると法的問題になる可能性があります。
3. 位置情報を扱う工作物
GPS追跡デバイス
一般的なGPSモジュール:
- NEO-6M、NEO-8M:最も人気の GPS モジュール
- NEO-M9N:高精度版、QZSS対応
- SIM808、SIM868:GPS + GSM通信機能付き
- u-blox ZED-F9P:RTK対応の高精度モジュール
下の画像は商品リンクです👇


GPSモジュールを使った位置情報システムは教育的価値が高い一方、使い方を誤ると問題となります。
問題となる可能性:
- 他人の同意なしに位置情報を取得・記録
- ストーカー規制法に触れる可能性
- 子どもの位置情報の適切な管理
安全な楽しみ方:
- 家族内での使用に限定
- データの保存・共有について家族で話し合う
- 位置情報の大切さについて学ぶ機会に
4. 電源・電圧関連の工作物
高電圧を扱う作品
注意が必要なモジュール例:
- 昇圧モジュール:XL6009、MT3608、LM2577
- インバーター:TL494、SG3525搭載のDCACインバーター
- Tesla Coil キット:15kV昇圧モジュール、SGTC Mini Kit
- 静電気発生器:Van de Graaff Generator Kit
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コイルガンやテスラコイル的な高電圧を発生させる工作は、電気用品安全法や場合によっては火薬類取締法に関わる可能性があります。
問題となる可能性:
- 100V以上の電圧を扱う機器
- 強力な磁場を発生させる装置
- 火花放電を伴う装置
バッテリー関連
注意が必要なバッテリー・充電モジュール:
- リチウムイオン充電基板:TP4056、MCP73871、BQ24074
- 大容量バッテリー:18650セル(3.7V 3000mAh以上)
- LiPoバッテリー:11.1V 5000mAh以上の大容量品
- 昇圧・降圧モジュール:LM2596、XL4016、LTC3780
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リチウムイオン電池の改造や、大容量バッテリーを使用した作品も注意が必要です。
5. 光・レーザーを使った工作物
レーザーモジュールを使った作品
市販されているレーザーモジュール例:
- 赤色レーザー:KY-008(5mW)、650nm 5mWモジュール
- 緑色レーザー:532nm 5mWモジュール、KY-016
- 青色レーザー:450nm 1-5mWモジュール
- 赤外線レーザー:780nm、808nm、980nmモジュール
- 高出力品:1W、2W、5Wレーザーダイオードモジュール
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レーザーポインターモジュールを使った工作は、出力によって規制の対象となります。
問題となる可能性
- 1mW以上のレーザー
- 航空機や車両に向けた照射
- 他人の目への照射
実際にあった!電子工作やモジュールの違法利用事例

【事例1】違法な無線機の製造・使用で書類送検(電波法違反)
- 内容:自作の無線送信装置を使ってアマチュア無線の周波数で違法送信。技適マークなし・免許なしで使用。
- 法令違反:電波法違反(無免許送信)
- ポイント:秋葉原などで売られている部品でも、組み立て方や用途次第で違法に。
- 参考:総務省は毎年「不法無線局の取締り結果」を公開しており、個人の工作によるものも含まれます。
【事例2】盗聴器を販売目的で製造した男を逮捕(2009年)
- 内容:小型のマイク・送信モジュールを組み合わせて盗聴器を製造し、インターネットで販売。
- 法令違反:電波法違反+都道府県迷惑防止条例(盗聴行為が問題視された)
- ポイント:秋葉原などでパーツが手に入ってしまうが、用途によっては違法。
- 教訓:録音や音声送信モジュールは、使い方で一気に違法化する危険性がある。
【事例3】レーザーポインターで他人の目を狙って書類送検(軽犯罪法+傷害)
- 内容:自作の高出力レーザーモジュールを用い、人に照射して危害を与えた。
- 法令違反:軽犯罪法、傷害罪
- ポイント:レーザーモジュールは通販で簡単に手に入るが、日本では出力制限(1mW以下)がある。
【事例4】電車のICカード改造で逮捕(不正競争防止法違反)
- 内容:交通系ICカードを改造・複製して不正乗車。
- 法令違反:不正競争防止法、私電磁的記録不正作出罪など
- ポイント:リーダーライターモジュール(RC522など)でSuica等の中身を読み出そうとする行為も極めてグレー。
【事例5】ドローンへの違法な電波装置搭載(電波法違反)
- 内容:自作のFPV(ドローンのカメラ映像を送る)装置が技適なしの海外製品。空撮中にトラブルを起こし摘発。
- 法令違反:電波法違反
- ポイント:特にFPV機器や長距離無線を使う工作は非常に危険領域。
安全に楽しむためのポイント

事前の確認習慣
以下の事を確認するようにしましょう👇
- 使用する部品の確認
- 技適マークの有無
- 出力・電圧の仕様
- メーカーの使用上の注意
- 設置・使用場所の検討
- プライバシーへの配慮
- 近隣住民への影響
- 公共の場での使用制限
- データの取り扱い
- 個人情報の保護
- 録音・録画データの管理
- 第三者への提供について
まとめ
身近なモジュールでも、使い方次第で法的な問題につながる可能性があります。
しかし、今回の内容を理解して楽しめば、電子工作は素晴らしい体験になります!
「これは大丈夫かな?」と思ったときは、以下を確認してみてください
- 使用する部品に必要な認証があるか
- 他人の権利を侵害しないか
- 安全に使用できる環境か
- 必要に応じて専門家に相談する
親子で電子工作を楽しみながら、技術と社会の関わりについても学んでいけたら素敵ですね。
安全で楽しい電子工作ライフを送りましょう!
この記事の内容は一般的な情報提供を目的としており、具体的な法的判断については専門家にご相談ください。


